眠れないのは腸のせい?ストレスでも年齢でもない不眠の意外な原因
「最近、なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「朝起きても疲れが取れていない」
そんな悩みを抱えたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「ストレス」や「年齢のせい」ではないでしょうか。
たしかにストレスや加齢は睡眠の質に大きく影響します。仕事のプレッシャーや人間関係の悩みで頭が休まらない夜もあれば、「もう若くないから眠りが浅いのは仕方ない」と諦めてしまう気持ちもよくわかります。
しかし、ストレス対策をしても、生活リズムを整えても、寝室の環境を工夫しても、なかなか眠りの質が改善しないという場合、実はまったく別の場所に原因が隠れているかもしれません。
その意外な原因とは…「腸」です。
「腸と睡眠なんて関係あるの?」と驚かれるかもしれませんが、近年、腸内環境と睡眠の質には深い関わりがあることが少しずつ明らかになってきています。
本記事では、腸と睡眠の意外な関係をわかりやすく解説していきます。
前回の記事はこちら↓
こんな症状に心当たりはありませんか?

本題に入る前に、簡単なチェックをしてみましょう。以下の項目に複数当てはまる方は、腸内環境の乱れが不眠の背景にある可能性があります。
・寝つきが悪く、布団に入ってもなかなか眠れない
・夜中に何度も目が覚めてしまう
・便秘や下痢、お腹の張りなど、お通じの悩みがある
・朝、スッキリ起きられず疲労感が残っている
・気分が落ち込みやすい、またはイライラしやすい
・甘いものや脂っこい食事を好んでとることが多い
・ストレス対策をしても睡眠の質が改善しない
いかがでしたでしょうか。当てはまる項目が多かった方は、ぜひこのまま読み進めてみてください。
一般的に言われる不眠の原因とその限界
不眠と言われる原因にはいくつか種類があります。自分は何が原因なのか見ていきましょう。

◆ストレスによる不眠のメカニズム
私たちの身体には「交感神経」と「副交感神経」という、相反する働きを持つ自律神経があります。ストレスを感じると交感神経が優位になり、心拍数が上がったり、筋肉が緊張したりと、心身が興奮状態になります。
本来、夜になるとリラックスを司る副交感神経が優位になり、自然と眠気が訪れるものですが、ストレスで交感神経優位の状態が続くと、このスイッチの切り替えがうまくいかず、寝つきの悪さや浅い眠りにつながってしまいます。
◆加齢による睡眠の変化
年齢を重ねると、睡眠に関わるホルモンの分泌量やリズムが少しずつ変化していきます。深い眠りの時間が短くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりするのは、多くの人が経験する自然な変化のひとつです。
◆それでも改善しない人が多い理由
とはいえ、ストレスを減らす工夫をしたり、寝る前のスマホを控えたり、寝室の環境を整えたりしても、なかなか眠りの質が改善しないという声も少なくありません。
「これだけ対策しているのに、なぜ眠れないのだろう」
そう感じている方は、実は「腸内環境の乱れ」という、見落とされがちな原因が背景にある可能性があります。次の章から、その仕組みを詳しく見ていきましょう。
睡眠の鍵を握る「メラトニン」というホルモン
ここでは睡眠とホルモンの関係を見ていきましょう。

出典:@koso_diet
◆メラトニンとは何か
メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、体内時計を整え、自然な眠りを促す働きを持つホルモンです。朝、太陽の光を浴びると分泌が抑えられ、そこから約14〜16時間後、夜になると分泌量が増えていきます。この夜間の分泌の高まりが、私たちに自然な眠気をもたらしてくれるのです。
◆メラトニンは「セロトニン」から作られる
実はこのメラトニンは、体内で何もないところから突然作られるわけではありません。日中に分泌される「セロトニン」という物質を材料として、夜になるとメラトニンへと変換されていくのです。
つまり、日中しっかりとセロトニンが作られていることが、夜の良質な睡眠の「土台」になっているといえます。逆に言えば、日中のセロトニン量が不足していると、夜に十分なメラトニンが作られず、寝つきの悪さにつながってしまう可能性があるのです。
◆メラトニン分泌を妨げる生活習慣
夜遅くまでスマートフォンやパソコンの画面を見ていると、ブルーライトの影響でメラトニンの分泌が妨げられるといわれています。また、不規則な生活リズムも、メラトニンの分泌タイミングを乱す要因のひとつです。しかし、こうした生活習慣の乱れの背景にも、実は腸内環境が関わっている可能性がある、という点をこれから見ていきます。
セロトニンの約9割は「腸」で作られている
次にセロトニンと腸の関係について解説していきます。

◆「幸せホルモン」セロトニンの役割
セロトニンは精神を安定させる働きから「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分の安定やリラックス感、心の落ち着きに深く関わっている物質です。セロトニンが不足すると、気分が不安定になったり、不安を感じやすくなったりすることも知られています。
◆セロトニンの大部分は腸内で合成されている
セロトニンというと「脳内で作られる物質」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、体内にあるセロトニンの約9割は腸で作られているといわれています。脳内にあるのはわずか数パーセントほどにすぎません。
腸内には数百種類、数百兆個ともいわれる腸内細菌が存在しており、この腸内細菌のバランスや腸内環境の状態が、セロトニンの産生に影響を与える可能性があることが、近年の研究でも注目されています。腸内環境が整っているかどうかが、実は心と眠りの状態にまで関わっているかもしれない、というのは興味深い視点ではないでしょうか。
※腸内環境とセロトニンの関係については、現在も研究が進められている分野であり、すべてが解明されているわけではない点には留意が必要です。
◆腸内環境の乱れがもたらす影響
腸内環境が乱れると、セロトニンが十分に作られにくくなる可能性があります。すると、その材料をもとに夜間作られるメラトニンの量にも影響が及び、結果として寝つきの悪さや眠りの浅さにつながることが考えられます。
◆腸内フローラのバランスがカギ
腸内細菌には、身体に良い働きをするとされる「善玉菌」、逆の働きをする「悪玉菌」、どちらでもない「日和見菌」が存在し、このバランスは「腸内フローラ」と呼ばれています。善玉菌が優位な状態を保つことが、腸内環境を整え、ひいてはセロトニンの産生を助けることにつながると考えられています。
腸と自律神経の深い関係「腸脳相関」

テレビや本なとで一度は目にしたり、耳にしたことがあるかもしれない「第二の脳」について解説していきます。
◆腸は「第二の脳」と呼ばれている
腸は消化・吸収を担う器官でありながら、脳と密接に情報をやり取りしていることから「第二の脳」と呼ばれることがあります。この脳と腸のつながりは「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」と呼ばれ、自律神経やホルモン、免疫系を介して双方向に影響し合っていると考えられています。
たとえば、緊張するとお腹が痛くなったり、逆にお腹の調子が悪いと気分まで落ち込んだりする経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。これはまさに、脳と腸が密接に連動している証拠のひとつです。
◆腸内環境の乱れが自律神経を乱す?
腸内環境が乱れると、その情報が自律神経を通じて脳にも伝わり、交感神経が優位な状態が続きやすくなるといわれています。交感神経が優位なままだと、心身がリラックスモードに切り替わりにくく、寝つきの悪さや眠りの浅さにつながる可能性があるのです。
つまり、腸内環境の乱れは「セロトニンの減少」という経路だけでなく、「自律神経の乱れ」という経路からも、睡眠に影響を及ぼしうるということになります。
◆悪循環に陥りやすい理由
さらに厄介なのは、睡眠不足そのものが自律神経のバランスを乱し、それが腸内環境をさらに悪化させるという悪循環を生みやすい点です。「眠れない→自律神経が乱れる→腸内環境が悪化する→ますます眠れなくなる」というループに陥っている方も少なくないかもしれません。この悪循環に気づき、どこかで断ち切ることが、不眠改善の糸口になります。
不眠の裏に隠れているのは「腸」かもしれない

ここまでの内容を整理すると、次のような一連の流れが見えてきます。
腸内環境が整っている
↓
腸内でセロトニンが十分に作られる
↓
夜、セロトニンがメラトニンへと変換される
↓
自律神経のバランスが整い、リラックスモードに入りやすくなる
↓
自然な入眠・質の良い眠りにつながる
一方で、腸内環境が乱れていると、このどこかの段階でつまずいてしまい、結果として「なぜか眠れない」という状態を引き起こしてしまう可能性があります。
つまり、ストレスや年齢は不眠の「引き金」ではあっても、その根本には「腸内環境の乱れ」が隠れているケースがある、という視点です。今まで様々な対策をしても改善しなかった不眠も、腸というアプローチを加えることで、何か変化が見られるかもしれません。
今日からできる腸活習慣

出典:@koso_diet
すべてを実践するのは大変ですが、毎日どれか一つ取り入れてみるだけでも変化が出てくるかもしれません。まずは続けてみる。を意識して取り組んでみましょう。
◆発酵食品・食物繊維を意識してとる
ヨーグルト、納豆、味噌、キムチといった発酵食品には、腸内環境を整える助けになるとされる菌が含まれています。また、野菜、海藻、きのこ類、豆類などに豊富な食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を良好に保つサポートをしてくれるといわれています。特に、水溶性食物繊維(海藻類、大麦、果物など)と不溶性食物繊維(野菜、きのこ、豆類など)をバランスよくとることが望ましいとされています。毎日の食事に少しずつ取り入れてみましょう。
◆朝の生活リズムを整える
朝、太陽の光を浴びることはセロトニンの分泌を促すきっかけになるといわれています。カーテンを開けて日光を取り入れる、朝に少し散歩をするといった習慣は、セロトニンの分泌だけでなく、体内時計を整えることにもつながります。また、毎日ほぼ同じ時間に食事をとることも、体内時計と腸のリズムを整えるうえで役立つとされています。特に朝食は、腸を目覚めさせるスイッチのような役割を果たすともいわれています。
◆適度な運動を取り入れる
軽いウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、腸のぜん動運動(腸が内容物を送り出す動き)を促すとともに、自律神経のバランスを整える助けになると考えられています。激しい運動である必要はなく、無理なく続けられる範囲で身体を動かすことが大切です。
◆リラックスする時間を意識的につくる
腸活というと食事や運動に目が向きがちですが、精神的なリラックスも腸内環境には大切な要素です。腸は自律神経の影響を強く受けるため、深呼吸や軽いストレッチ、湯船にゆっくり浸かるといった時間を意識的に作ることも、間接的に腸内環境を整えることにつながります。
◆腸に負担をかけすぎない生活を心がける
暴飲暴食や偏った食生活、睡眠不足そのものも、腸内環境を乱す要因になり得ます。腸活と睡眠は互いに影響し合う関係にあるため、「眠れないから腸活を頑張る」だけでなく、「腸に優しい生活を送ることで眠りも整っていく」という両方向のアプローチを意識すると良いでしょう。
よくある質問

Q1.腸活を始めればすぐに眠れるようになりますか?
A1.腸内環境の変化には個人差があり、また、時間がかかることも多いといわれています。即効性を期待するというよりも、日々の生活習慣として無理なく続けていく姿勢が大切です。
Q2.サプリメントで腸活をしてもいいですか?
A2.乳酸菌などのサプリメントを活用すること自体は選択肢のひとつですが、まずは食事や生活リズムといった基本の習慣を見直すことが優先されます。持病がある方や薬を服用中の方は、サプリメント摂取前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q3.何日くらい続ければ効果を感じられますか?
A3.腸内環境の変化には個人差が大きく、一概にはいえません。数週間単位で気長に取り組み、体調や睡眠の変化を記録してみると、変化に気づきやすくなるかもしれません。
まとめ|眠れない原因は「腸」にあるかもしれない

「眠れないのはストレスのせい」「年齢のせいだから仕方ない」そう思い込んでいた方も、実は腸内環境の乱れが根本にある可能性があります。
・セロトニンの約9割は腸で作られている
・セロトニンは夜、メラトニンに変換され、自然な眠りを促す
・腸と自律神経は密接につながっている(腸脳相関)
・腸内環境の乱れは、セロトニンの減少と自律神経の乱れ、両方の経路から睡眠に影響しうる
・「眠れない→自律神経の乱れ→腸内環境の悪化」という悪循環に陥っているケースもある
この一連の流れを知っておくだけでも、不眠へのアプローチが少し変わってくるのではないでしょうか。まずは発酵食品や食物繊維を意識した食生活、朝の生活リズム、適度な運動など、無理のない範囲で腸活を始めてみてはいかがでしょうか。
なお、不眠の状態が長く続く場合や、日常生活に支障が出ている場合には、自己判断で対処しようとせず、医療機関に相談することもおすすめします。